日本人には慢性胃炎が多いと言われます。慢性胃炎とは慢性という名前がついているだけあって、長期にわたり胃炎が持続している状態のことです。
長い間アルコール、コーヒー、タバコ、ストレスなどが原因であったり、加齢に伴う変化として慢性胃炎が発症すると考えられてきました。
しかし最近ではピロリ菌の長期感染によって慢性胃炎が引き起こされることが分かってきました。実際にピロリ菌感染がなければご高齢の方でもきれいな胃粘膜を見ることがあります。ピロリ菌についての詳細は別項を参照いただければと思いますが、ピロリ菌は強酸性の胃液に耐えることができる細菌で、感染すると胃の粘膜に住み着いて、有害な物質を作り出すことから胃炎を引き起こすと考えられています。そしてピロリ菌は長い年月をかけて胃炎の範囲を徐々に広げていくのです。慢性胃炎をベースに胃がんを含めた、種々の胃の病気が発症することがあります。図をご参照ください。
①胃炎のない、きれいな胃粘膜の所見です。
②ピロリ菌の感染による胃炎が持続している所見です。
③長期に胃炎が持続すると、胃粘膜は菲薄化していき血管が
透けて見えるようになります。
慢性胃炎の状態と自覚症状の程度は必ずしも一致しません。
また慢性胃炎でそもそも症状がでるものなのか、どのような症状がでるか、なぜ出るか、などわからないことが多くあります。現実に、自覚症状がなく定期健康診断ではじめて見つかることもよくあります。
比較的多くみられる症状は上腹部の不快感、膨満感 食欲不振などがあります。慢性胃炎により、胃液が十分に分泌されなくなると、食べ物が消化されにくく食欲不振や胃もたれの原因になることがあります。
内視鏡検査で胃の粘膜を観察することにより容易に診断がつきます。
内視鏡検査時に慢性胃炎の所見を認めれば、ピロリ菌の感染の可能性が高いと判断し、その場で、胃の組織をわずかに採取することにより、ピロリ菌の有無を判断することができます。
やはりピロリ菌の除菌をすることです。日本ヘリコバクター学会でも除菌を勧めています。
お腹の症状がある場合には、症状に合わせて胃酸を抑える薬や、胃の粘膜を保護する薬、胃の運動を改善するお薬なども処方することもありますが、あくまで症状に合わせて検討すればいいのであって、かならずしも内服が必要というわけではありません。
また慢性胃炎を発症するとその後胃がんが発症する可能性が高くなりますので、定期的な内視鏡の検査が必要になります。